☑︎ゴミ問題とゴミ教育
サトシ:ゴミの話しましょうか。ゴミばっかりでしたよね。
大月:思ったより、陸も海もゴミだらけで。
イアン:北に行くとゴミを山積してる埋め立て地があってね。夢の島みたいな。島の小ささに対してあのゴミの量。あれはビビった。
サトシ:日本みたいにリサイクルなり焼却なりっていうゴミを処理する方法がないから、缶1個飲んだら缶1個島にそのまま残る。輸入品の数だけゴミが増える。イコールあそこの山積み埋め立ての一部になるという、そのシンプルな構図。
遠藤:自分たちが生むゴミの量がよく見えるよね。日本だとね、見えないところで全部処理しちゃうからね。
ニーナ:それがツバルでは丸見えですね。
遠藤:やっぱり首都だし6000人もいるからね。それでお金出して輸入したものを買っちゃったら、そりゃゴミだらけになる。
サトシ:でもなんか、綺麗にしようと思っている部分もありますよね。空港でさ、イアンがバナナの皮だっけ、ミカンの皮だっけポイッって捨てたらめっちゃ怒られて。
イアン:そこら中にタバコの吸殻は捨ててあるのにな。
サトシ:そうそう(笑)。
大月:タバコは道に捨てるってルールがあるのかと思うレベルでポイ捨てを推奨されるよね(笑)。「そこに投げ捨てろ!」って。
イアン:果物の皮は土に還るものだから大丈夫だろうと、吸殻よりマシだと。そういう考えだったのに、「ストップ!」って怒られた(笑)。
遠藤:ゴミの認識が全然うちらと違って、ゴミというのは使えるものをゴミっていうのね、あの人たち。
大月:ん?
遠藤:落ち葉とバナナとかそういう食べ物のカスはゴミなんだけど、プラスチックとかアルミ缶とかはそうだな、石に近い。
大月:へえー!
遠藤:あっても使えないから拾わない。落ちてても放置する。逆に葉っぱとかバナナとかは集めてバナナの木の根元とかに置けば肥料になる。
イアン:だから怒られたんですね、僕は。それ使えるものでしょって?
遠藤:だと思うよ。ちゃんと使いなさいよみたいな。
サトシ:なるほどな。全然理解できてなかった。そういうことか。
遠藤:ゴミ集めのプロジェクトとか何回もやってるんだけど、こういうのを集めないんだよ。アルミ缶とかプラスチックとかは。
大月:こういうのは石と一緒だからそこに置いとけばいいんだ。なるほど。ゴミの概念がすごく、、、
遠藤:狂ってるんだよね(笑)。
大月:そういう教育が行き届いてないのに、先に物だけが届いちゃっている。それは問題だわ。
イアン:スゲーなそれ。意味が分からなさすぎる。まずは教育が必要ってことですね。
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☑︎フナフティの汚染
大月:フナフティで驚いたのはめっちゃバイク走ってるじゃん。「ツバルって環境問題の関連で援助を受けてるのにめっちゃ排気ガス出してるじゃん!全然クリーンじゃない!」って思った。そしたら現地でのインタビューでその点の矛盾を訴えている人がいてくれて、良かったと思って。
ニーナ:みんな汚いって思ってる。
イアン:「空気が悪くてね」とか言ってたね。
大月:あとあれかな。二日目くらいでサトシと「早速、海で泳ごうぜ!」ってなって。
サトシ:はいはいはい。
大月:で、綺麗な海岸の情報とかもなかったから、とりあえずオーバビュー事務所の目の前の海に入ったら、めちゃくちゃ汚くてさ(笑)
サトシ:生活ゴミも浮いてるし、水中は海藻だらけ。海藻の迷路みたいな(笑)
大月:想像してたツバルって、手つかずの珊瑚、綺麗な魚がうじゃうじゃみたいな。だけど場所によってはかなり汚い。風が強い日に海岸に立つとね、本当にゴミがブワーーって波打ち際に溜まってるところとかある。
イアン:あの海藻が増える理由って、うんことかが垂れ流されてるからできた海藻らしい(笑)
大月:生活排水。汚染によってああなるんだ。
遠藤:俺が20年前に最初に行ったときは、海藻生えてなかったんだよ!
サトシ:マジか!!。。
イアン:海藻生えてるイコールここはちょっと汚染されてるんだなということ。
大月:そういうことかー。確かに、人が住んでない北とか南の方に潜ると超綺麗だった。
イアン:超綺麗。海藻なんてないし、珊瑚も魚もいっぱいいる。
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☑︎ 気候変動の影響で季節がずれてる
サトシ:うちらの滞在中である12-3月は雨季だって聞いてたんですけど、最初の頃はまったく降らなかったですよね。
遠藤:だから異常気象なんだよ。気温も20年前と比べたら確実に暑くなってるよ。
ニーナ:たまに歩けなくなってずっと家にいた日あったじゃないですか。暑すぎて外歩けない。
イアン:無理でした。帽子かぶってるとかそういうレベルじゃなくて。ただもう、こう「ふー」って。一切の行動を諦める感じ。
大月:台風も20世紀後半から増えたって聞きましたけど。
遠藤:増えたね。
大月:今までは台風が通過する場所じゃなかったんですよね?
遠藤:そうそう。生まれる場所くらいだからね。赤道直下だしね。ここで生まれてどこかに流れていく感じ。
サトシ:今では巨大台風の影響で高潮被害が頻発していると。ヤシが根元から倒れてしまったり。
大月:インタビューでも異常気象を訴えてる人いたね。「最近雨季と乾季がはっきりしなくなってきて、めちゃくちゃ暑い」って。
イアン:到着してからみんなと合流するまでの二週間半は一度たりとも雨が降らなくて水不足になって。1回50ドルで家の横にある大きな貯水タンクに水支給するトラックに二回来てもらったんですよ。その時に遠藤さんに「あと一週間雨が降らなかったら日本に帰る」って言われて。
遠藤:生存に関わる危機的な状況が迫ってたんだよ。本当にやばかった。
大月:そういう時って水はどこから来てるんですか?
遠藤:海水を真水に変えるディサリネーターっていう機械を使って生活水を作ってる。
ニーナ:それがめっちゃケミカルな味するんだよね。
イアン:1980年代までは井戸から地下水が引けたけど、それが海面上昇のせいで海水の侵食を受けて、今では海水しか引けなくなっている、っていう問題がそもそも背景にあるんですよね。
遠藤:そう。だから今みたいに雨水に完全に依存するようになっちゃった。最近は季節がずれたことでそれすら危うくなっている。実際に過去には、危機的な水不足になって緊急事態発令を発動しているよ。
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☑︎実体験に基づいた気候変動の「リアル」
遠藤:ツバルへの気候変動の影響を理解する上で、フナフティの北部に住むおじさんの話はとてもわかりやすいかな、と思った。
大月:あれか、自分で防波堤作ってたおじさん。
イアン:自分の家族を海から守るために10年以上かけて海岸に落ちている石を積み上げて家を囲うように防波堤を作ってて。オーシャンサイドの壁は自分の身長よりも高かった。
遠藤:海側のやつは高かったよね。
イアン:そのおじさんが「俺はこの壁を建てた範囲のことしか話せないけど、最近は海が壁を乗り越えてくるんだよね。だからほとんど壊れちゃった」と言っててさ。ツバルは観測データがあまりないけど、実体験として人々は被害を感じている。それって何よりもリアルだなーと思った。
大月:俺もそう思った。海面上昇してるしてないって論争より前に、原因はともかく現地の人はこう体感してますって。「前はビーチがあそこまであったのに今ここまでしかないんだよ」「昔はくるぶしまでしか水上がってこなかったけど、今は膝まで来る日あるんだよ」とか。
ニーナ:「 キングタイドの時浸水するのも、昔は滑走路だけだったけど、今は島の内陸まで浸水する時がある」って言う話もあったな。
大月:実体験に基づいた話だから、それはそうなんだろうな。何らかの異変は起きてるんだなと。
サトシ:ちなみに浸水でカバトエトエ*とかで子どもたち遊んでたじゃないですか。あれ見てどう思いました?
*フナフティの南部に位置する、島で最も海抜が低い集落
大月:あれ見て超リアルだなと思った。慣れてるなって。
サトシ:日常だなと。
大月:そうそう。困難な土地柄で生活する人って世界中にいると思うけど、そこに住んでたらその土地柄を利用して楽しく生きていくしかないから、それがまんま見れた感じ。すごく水かさが増してもバッシャバッシャ泳いでたし、水の中に丸太とか沈めてその上で遊んだりとか、船作って浮かべてみたり。
イアン:それだけ海面上昇が日常化してるんですよね。あそこにいる人たちにとってはそこが遊び場になるほど海面上昇は普通のこと。
大月:子供にしてみたら「わーい!水で遊ぶぞー!」くらいの感じかもね(笑)
サトシ:そういう気候変動による変化を感じていて、不安だから移住という選択が度々頭をよぎるという話をしてる人もいたな。
ニーナ:たくさんの人が移住を考えててびっくりした。
イアン:自分は海面上昇が起きていのるかいないのか、ぐらいのものを見にツバルに行ったつもりだったんだけど、「これ以上ここには住めないんでオーストラリアに住みたいと思う」って言ってる20代の学生とか「子ども3人連れてニュージーランドに逃げようと思う」って言ってる30歳のお母さんと出会って、気候変動っていう問題のリアリティに衝撃を受けた。被害を免れるために移住するっていう選択を、みんな普通に考えてた。
大月:「沈むなら私もここで死ぬ」って言ってる人もいたし、結構人によって考え方はバラバラだなとも思った。
ニーナ:神様に救われるっていう信心深いおじさんもいたね。
サトシ:そういうふわっと考えている感覚的な人もいて、もうちょっと真面目に移住を考えている人もいて、本当に色々だなとは思った。ただみんな常に海面上昇については意識をしているというのが印象的でした。
*移住について詳しくはこちら「沈みゆく国ツバルに残された選択肢」
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☑︎ツバルに残された二択
大月:ツバルって人が住み始めてどれくらいですか?
イアン:紀元前から居たらしい。アイランドチーフ(わかりやすく言うと島で一番偉い人)のシリンガさんの話を聞くと、1760年頃から人が増え始めたっぽいですね。
*詳しくは「島のチーフ・シリンガ氏に聞く、ツバルの歴史」
大月:ほうほう。でもツバルって海抜2メートルで、しかも上空写真見ればわかるけどめちゃくちゃ細い。ぶっちゃけそもそも人が住まない方がいい(笑)
遠藤:元々はそうなんです。あんなところに住む方が悪い(笑)
イアン:結局、もし島がなくなるなら生きるには二択しかないわけですよね。移住するのか、あるいは埋め立てて人工島を作るか。
サトシ:でも移住っていう選択も人だけが移動するのか、もしくは国家そのものが移動するのかで結果が全然違う。
遠藤:そう。キオアの例のように、どこかの土地を買って、ツバルの一部の人たちが住み着いてその国の市民権を得ながらも、ツバルの文化を保持して生活するのなら平和にやれるんだけど、ツバルみたいに均質な地質で9つの島に分かれてて、沈んだら一気に沈んじゃうっていうことは国家がなくなっちゃうわけじゃん。国家自体が例えばオーストラリアのどこかに移ったりするとすごい大変なんだよね。国境が生じちゃうわけじゃん。国境から200海里とかできちゃうわけじゃない。ものすごく軋轢を生むわけ。
大月:やっぱり解決策は埋め立てによる人工島だわ、これ。
遠藤:人工島はすごいお金がかかるように見えて、実はリーズナブル。
イアン:僕もそう思うんですよ。一番実はいらないトラブルを排除できるという選択肢は人工島なんですよ。自治権もそこで守れるし、文化もそこで守れるという意味でも人工島が一番合理的。しかも人工島を作る資源として目の前の海の砂があると。
大月:俺も人工島、埋め立てによって陸地を増やす計画がいいと思うよ。それしかないと思う。そもそも住んじゃダメだここー!って場所なんだから(笑)
遠藤:人工島ができたら超平和だよね。
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☑︎じゃあ私たちはどうしたら良いのか?
サトシ:移住しようと考えてるシーラさんとかの話聞いて、実際みんなはツバルのことを自分事として考えるようになりましたか?
大月:環境問題を自分事として考える部分はより強くなったけど、ツバルをと言われると難しいな。日本人として福島のことを思い出した。そういえば日本では既に移住してる人たちいるわと思って。俺、このツバルの人たちのことを考えたりしてるけど、もっと福島の人のこと考えないと順序おかしいなって思った。
遠藤:その通りですね。
イアン:あとは実際、自分がやれる事がすごく限られているなーと思った。ゴミを減らすとか、再エネの電力を選ぶとか、自転車に乗るとか、日々の生活の中で CO2 を減らすことはしなきゃいけないんと思ったけど、「ツバルの人のために」と聞かれると、明快な答えがなかなか出てこない。
遠藤:俺は自分事として、結局移住したんだよね。鹿児島で自給自足をしようって。
イアン:それはひとつの答えですね。
大月:映像作ってる俺ができることは、まあ映像は電気を使うからとりあえずは電気かな。カメラのバッテリー充電も、PCでの編集も全部電気だから。クリーンな電力会社を選んでるけど、持ち家だったらソーラーパネル設置して自足してみたいな。その方が俺の映像は太陽のエネルギーでできている、って目で見えるから。
遠藤:そうだね。作るも見るも電気だからね。なんか千葉の奥地とかさ、あそこら辺に引っ越してさ。
大月:ヤダヤダヤダ、都会にいないと俺成り立たない(笑)。
遠藤:都会はおかしいから。
大月:おかしいけど好きなんですよ。けど2拠点はありだなって今思ってるけど。
イアン:ありですよね。
遠藤:ごめん! ちょっと、話の途中だけど、そろそろ俺帰らなきゃ。飛行機の時間に間に合わなくなっちゃうよ。
サトシ:ツバルに帰るんですか?
遠藤:鹿児島だよ!
大月:ワハハ!
イアン:では遠藤さん、フェタウイ〜!*
*ツバル語で「さようなら」の意味。