column3
2018.06.20

キオア島で考えたこと〜途中合流メンバー・Mハラ氏の手記〜

執筆担当
Mハラ
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☑︎キオア島で考えたこと〜途中合流メンバー・Mハラ氏の手記〜

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〜序文〜
これは、飛行機のエンジントラブルでツバルに行くことが叶わなかった2人のコラム。
フィジーとツバルを結ぶ飛行機ではトラブルが起きるのはよくある話らしく、ツバルに行くことができない、または逆にツバルに行ったきり2ヶ月間も帰れない、船で無理やりフィジーに帰国したなんてことも、過去にはあったと聞きました。そう、ツバル旅行には、行く心構えと同じように、辿り着けなかった場合の心構えも必要なのです。このコラムは、そんな“ツバルに行ってない人”が書いた、一旅行者のただの旅の備忘録です。しかし、そんな“ツバルへ行けなかった人”の“ツバルへ行きたい”という気持ちが珍道中を巻き起こし、貴重な経験をしていろいろなことを考えるきっかけになりました。この珍道中が少しでも“ツバルに辿り着けなかった場合”のお役に立てれば幸いです。

↑左がM原氏、右は相方のY山氏

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☑︎いざ、ツバルへ

「Mさん、温暖化で数十年後には沈むと言われているツバルっていう島に行くんだけど、一緒に行こうよ」

そう言う悪友の軽い誘いにのり、韓国を経由して約10時間、私たちは男2人でノコノコとフィジーまでやってきた。

しかし翌日の朝、フィジーのナンディー空港から国内線に乗り、ツバル行きの飛行機が出るというスバ空港に向かうと、自分たちのフライトはエンジントラブルでキャンセルになったと聞かされる。しかも、フィジー・ツバル間の飛行機は、しばらく飛ばないらしい・・・。

7泊8日の日程で、ツバルへの旅の予定だった。

しかも、ツバルには先発隊が行っていたので、僕らは全くのノープランで先発隊に合流すればなんとかなるという、いわば人任せの旅だった。

旅の目的地に行くことが出来ない、すなわち完全に目的を失った男2人は、残り7日間の空白を、心にポッカリ空いた穴を埋めるために、ツバルへ行く以上の経験を求めて半ば強引に予定を組んだ。というか、組むしかなかった・・・。

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☑︎フィジーで
まずは、私が今回ツバルでしたかったことの一つにあった釣りだ。

その目的に少しでも近づくために、フィジーで釣りをすることにして、旅行会社に釣りがしたいと相談。船をチャーターしてフィジーの海へ釣りに出る。

今回で初釣りとなる相方の様子を気にしつつ、私は海の風を感じながら釣り人として気分が上がっていた。

そして、そこでなんと相方が魚ではなく「黒いドレス」を釣るという偉業を成し遂げる!

↑Y山氏、ドレスを釣り上げ満面の笑み

あの大海原で、しかもトローリングで、ドレスを針にかける確率はどれくらいだろうか!?
しかも、釣った相方の職業はファッションデザイナー。「ファッションデザイナー、初めての釣りで、ドレスを釣る」って・・・。

出来過ぎた話と、天文学的?な確率に、釣り人である僕は嫉妬すら覚えた。
しかも、釣ったドレスのタグには、Meraniaとマジックでご丁寧に名前すら書いてあった

初日にして、ツバル超える経験が出来たか?残りの日程をMeraniaを探すのにあてようか、とさえ思ってしまう出来事だった。

ただそんな中、往生際悪く、私たちはツバル行きを完全に諦めることはできず、なんとか行く方法はないかと考えていた。

そしてその夜、そういや前職のボスは買った飛行機で自由に旅してるよな、と思い出し、「飛行機って自由なんだ」、と気づいたのでした。

僕らは、飛行機をチャーターしてでもツバルに行こうと決めたのでした。

↑リゾートアイランドに降り立つ相方

次の日になっても、俄然旅の目的がない私たちは、空虚な心を癒すために、旅行会社に進められるがままリゾートアイランドへ行くことに。

そして、その島のわずかなワイファイが繋がる場所から、飛行機をチャーターするために旅行会社とコンタクトを取り続けた結果、ツバルに行ける飛行機は、オーストラリア、ニュージーランドにはなく、アメリカから呼ばないといけない、ということが判明。

フィジーに着いて4日目で、私たちはとうとう9割がたツバル行きを諦めることに。

しかし、旅行会社に連れてこられたこのリゾートアイランドから出るには、翌日の15時の迎えの船が来るまで待つしかなかった・・・。

この島ではツバル以上の経験を得ることはできないと悟った僕らは、この現実から逃避するために、自暴自棄にシャンパンを飲み続けました

↑もはや様子のおかしい相方

明くる日も、帰りの船を待つ間に、朝からポンポンッと自暴自棄にシャンパンを呑んでいると、5本目?くらいのときに、ツバル先発隊から連絡が入った。

臨時便が飛ぶので、今日、フィジー本島に戻ってくると・・・。

そこからはあまり記憶がないのだけれど、どっかのホテルの前で、車で到着したツバル先発隊と、会うのは2回目なのに、ガッツリ抱き合い再開を喜んだ。

僕らは先発隊と合流するという目的を果たすことができた。先発隊からしたら、この飛行機が飛ばなければ、いつツバルから帰ってこられるか分からないという悪夢から抜け出し、その気持ちがアツい抱擁という形になったのだろう。

ツバル滞在1ヶ月のメンバーもいる先発隊は日本食に飢えていたので、ホテルにある日本風の居酒屋に行くことになった。

そこで、僕らは5分に一回くらい、「静かにしてください」、と、店員さんに怒られながら、ツバを飛ばしながら、どれだけ僕らがツバルに行きたかったかを力説した。

そんな僕らの哀れな姿を見て、ツバル環境親善大使の遠藤さんが、「だったら、俺に任せろ」的なことを言っていた記憶はある・・・。あと、持っていたクレジットカード4枚を先発隊の平井堅に似た子に渡した記憶がある・・・。

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☑︎ツバルへ!?

次の日、目覚めてホテルのロビーに集合するも、昨晩の記憶が曖昧、どこに行くのかが分からない、昨晩泥酔していたことがバレるのが恥ずかしくてどこに行くのかも聞けない・・・。

頭の片隅にキヌアという単語だけ残っている。そして、みんなの会話から、どうやら、セスナをチャーターしてどこかに行くらしい、と。そして、入島許可がないと上陸できない島に行くらしい、ということが分かってきた。

↑チャーターしたセスナに乗り込む一同

セスナに乗りフィジー国内を移動して、そこから妙にカスタムされた車で1時間走り、フィジー本島の端っこの小さな桟橋へ。

そこから小舟に乗って15分。ようやくキオア島という島に着いた。キヌアではなかった。そこは、あの行きたかったツバルの人が移住して暮らしている島だった。まさにもう一つのツバル、いやもうツバルに来たことにしたい。ツバルに行って来たと、堂々とウソをつきたい。

↑定期便は出ていないので一般観光客が入島することはできない

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☑︎キオア島で
キヌア改めキオア島で生活している人は約200人、歩いて20分くらいで村の端から端まで行ける、海岸沿いに9割以上の島民が住む、ほぼ自給自足の島

まずは、島のチーフにご挨拶。チーフの家に行き、全員車座になって座り、チーフのお話を聞く。妙な緊張感がある中、島の歴史と、日本のことが好きでいてくれるらしく、日本の良いところと、日本の歴史のお話。15分くらいだったか、英語なので途中から、右から左へ・・・。

↑楽園と呼べるほど美しいキオアの風景

そのあと、みんなで島を散策することにした。ぷらぷら歩いていると、みんな「タロファ〜」と笑顔で挨拶してくれる。

照りつける日差しの中、僕たちは、日陰を目指し、日陰に入れば、誰かが休んでいて、談笑。みんな、日陰でゴロゴロしてて、仕事をしてる感じはない。のんびりと、思い思いにそれぞれの時間を過ごしている。まるで時が止まっているような世界

軒先で、あぐらをかいて、ご飯を食べている人がいる。必ず、食べていけと言われる。夏休みに日本の祖父母の家に行ったときに、軒先でスイカを切ったから食べていけと言われたのを思い出す。こういうのを牧歌的な雰囲気とでも言うのかな。

とにかく、ゆっくり時間が過ぎている感じ。

↑声をかけられたのでとりあえず上がり込んでご馳走になるの図

その日は、夕方から葬式があるとのことで、チーフから葬式中はなるべく出歩かないでくれ、もしくは参列してくれと言われる。

僕らは、参列することにした。参列といっても、みんなが集まっているゴザに一緒に座らされて、植物の根っこを粉状にしたものを絞った、泥水みたいな、カバという飲み物をまわし飲みして、みんなと一緒に食事をするだけだったのだけど。

↑一族で位の高い人(基本は年長者)から順に食べる

食事は、長細い座敷の大広間みたいな部屋で、30人くらいが2列になって、向かいあって座り、みんなで食べる。内田裕也さん似の隣の初老の島民からは、ひたすら、イートイート、もっと食べろもっと食べろと言われ続けた。

カバは南太平洋伝統の飲み物で、向精神物質群を含むらしいのだが、お酒のようにテンションが上がることもなく、言われていたほど、ドープになるわけでもなかった。

そうこうするうちに、賛美歌のような歌がアカペラで始まり、男性たちのハモリも入り、煌々として雰囲気に飲まれるも、個人的には効果が分からないまま、なんか、心が洗われたような気はするんだけど。カバの効果がはっきりとは分からぬままだった。

↑賛美歌のような歌を聞きながらカバを飲む

ただ、大勢が輪になって、あんな歌声をきいて、ひたすら大量の液体を黙って回し飲みしていたら、カバでなくても、さすがにいつもと違った精神状態にはなるのでは、とも思ってしまった。

真っ暗の中、満天の星空を見上げながら、寝床に向かった。途中、流れ星が流れると、僕は、カネカネカネと三回唱えたのでした。

↑寝床

次の日、飲み水としてチーフがわざわざご用意してくれたタンクの水に、何匹かのボウフラがイキイキと泳いでいるとみんなが大騒ぎしている中、僕はぐっすり寝て気分良く起床。

この日は朝からチーフの息子さんであり、島唯一の小学校の校長先生にインタビューをした。お金についてどう考えているか?など。

↑インタビューをした校長先生

答えは、それぞれ即答で一番大切のものは、ファミリー。ちなみにファミリーは、ワンビレッジワンファミリーって言ってたかな、この島全体のコミュニティも含めての表現だったと。お金は、島に必要なものを買うもの。今の生活に満足しているので、これ以上は必要ないと。あまりの即答に、セリフかよ、って思うほどだった。

まあ、とは言っても、島には島なりの悩みもあるし、個々でそれぞれいろんな悩みを抱えてるとは思うけど、でも、これが本心なんだろうなあ、もしくは、そういう思想を持って教育もしているんだろうな、と、思った。なんか、この時いろいろ考えた。

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☑︎キオア島でいろいろ考えたこと


考えたことのキーワードは、ファミリー、お金、島という環境。そして、選択肢、とは。

☑︎ファミリーについて
今回、この島で滞在した僕らもファミリー?的な扱いを受けた。島のコミュニティー、ファミリーで大切にされていることは、みんなで食事をするとか、みんなで同じことをするということだそうだ。古き良き昭和として語られる、昔の日本、昔の家庭はこうであったと思う。同じご飯食べて、同じテレビ見て。今は携帯を片手に個々で好きなものを見てるんだけど・・・。正直、行く先々で、ご飯すすめられて、みんなで一緒にご飯食べたとき、なんか感動してしまった。で、影響されやすい自分は、みんなが幸せになる、ファミリー、コミュニテイみたいなのって素敵だなって憧れたけど、自分はみんなで同じことをするっていう集団行動が苦手だったということを思い出して、大きな矛盾に悩んでしまった・・・。

↑孫を抱える、笑顔のおばあちゃん

☑︎お金について
お金は必要なものを買うだけのものと、きっぱり答えてくれた。そりゃあ、そうなんだけど、日本じゃ、何するのにもお金がかかるし。逆に、お金を得る手段もいくらでもあるし。ちなみに、島を散歩してて喉が渇いたので、飲み物を買いたくなりお店はないのかと聞くと、店は4軒?あるらしいとのことで、そのうちの1軒に行ったけど、水すら売ってなかった・・・。この島では、お金があっても買うものがないようだ。お金って使えないと、何の価値もないものなんだと、当たり前なんだけど。そんな島なので、何かを売りつけてくる人もいないし、親切さにも何も見返りを求めてない感じになんか感動しちゃうし。ここにお金が入ってきたら、今より便利になって、一般的に生活は豊になるんだろうけど・・・。だろうけど・・・。

↑小学校に設置された太陽光パネル。お金はコミュニティにとって必要なものに使われる

☑︎島という環境について
このファミリーを大事にする思想、お金についての思想は、この閉鎖された島という環境がつくってるものだと思った。日本も島国、鎖国してた時代も含め自由に海外に行きにくかった頃は、この環境、ここに住む人々たちで生きて行く、一致団結して協力していくっていう、絆や強さがあったんじゃないかなんて。そういや前に、こんなCMをラジオで聴いたのを思い出した。今の日本は、世界と繋がっているけど、近所の人とは繋がっていない、そんなようなことを言ってた・・・。でもご近所付き合いって、面倒なときもあるよな・・・。

↑漁に出る男性と木陰で休む家族

☑︎選択肢について
選択肢があればあるほどいいと思って生きてきたけど、本当にそうなのかって思い始めた。少なくとも、選択肢があるのはいいことだと思うけど、ないから幸せではない、ということはないらしい、と思った。お金を使った選択肢がないからお金で悩まない。人間関係の選択肢も、島では限られてる。だから、身近な人を大切にするのかもなんて。恋愛の話で、同じ時間を過ごせば過ごすほど、好きになる、っていう話も聞いたことがあるし・・・。でも、この島で馴染めなかったら、どうなんだろとも・・・。

この島で過ごすのは、暇じゃないのかとか退屈じゃないのかとか、考えてしまったけど、常日頃、何が幸せだとか、何のために生きるだとか、考えがちだけど、周りの人を大切にして、過ごしていれば、それが一番幸せなんじゃないかと思った。暇って何?生きる目的って何?周りの人、家族を大切に生きていればそれが幸せ?必要なものだけあればいい?お金じゃ得られない幸せ。そもそも、幸せって何?って考えてること自体が、幸せじゃないんじゃないかとも・・・。

帰りのチャーターした飛行機に乗りながら、キオア島に行けたのは、資本主義の恩恵をウケにウケて手にしたお金があったから?お金を使うことで選択肢が持てたから?お金がなければキオア島には行けなかった・・・?成田について電波が繋がると、株価と仮想通貨の残高を見る自分がいるのでした・・・。

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☑︎そして、日常へ
帰国した次の日には、青山のスパイラルカフェでおしゃれなパスタセットを食べながら、欲とお金にまみれた打ち合わせ(うそうそ、クリエイティブな話や社会貢献もちゃんとある)をして、夜には、欲望が渦巻く六本木へ・・・。

一度缶詰を買ったら、もう買うことを止められないツバル人がいると聞いた。美味しいもの、便利さ、楽しさ、快楽、、、一度味わってしまったら人間の欲望は止められないと聞いたことがある。

欲望を抑えるのはいさぎよく諦めるとして、今の生活の中に、少しでも、今ある環境、家族、周りの人を大切にするということを、意識したら今より幸せになれる気がした、いや幸せになれる。

人間はないものねだりだし、周りの環境によって左右される生き物だと思うし、何が幸せなんか人それぞれだと思うけど、個人的に今回の旅で、良い?濃い?人間関係は自分の人生の中で幸せになるための大きな要素、今のところ一番の要素だと確信した、41歳2月の思い出。

〜追記〜
これを書いてて、そういや、以前所属していたファミリー?のような会社のボスが本気で社員を集めた村をつくろうとしていたのを思い出しました・・・。

@ペンネーム Mハラ
プロフィール:株式会社MYY代表取締役。幸せ研究家。
某インターネットサイトZ○Z○○○○Nを運営する会社を退職し、愉快な雰囲気のバーを開業、秘密のキャンプ場を開墾するかたわら、魚釣りと映画鑑賞を通じて、日々本当の幸せとは何かを模索中。

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